病院図書室のレファレンスから

病院図書室のメイン業務のひとつに利用者が求める文献収集のサポートがあります。


今年5月にJHLAの2009年度第1回研修会において、会長より「病院図書室の認知度」と題した講演がありました。


それによると、医療従事者が、臨床現場における業務の傍ら研究、学会発表、論文の執筆などににも取り組んでいるということが認知されていないようでした。


私自身、病院図書室に勤務して初めて、医師が研究を行っている実際を知ることになりました。

「最新の医学論文には目を通しているのだろう」くらいの認識はあったのですが、そんなものではありません。

診療をこなす一方、研究にも大変意欲的であり、熱心です。
また医師だけではなく、看護師やコメディカルの皆さんも、忙しい時間の合間にそれぞれの研究に取り組んでいます。

こうした図書室利用者をサポートするため、いかにスムーズに文献を入手するか。

病院図書室司書のやりがいを感じる瞬間です。


医師から依頼される文献は、多くの場合、英語論文であり、年代も比較的最近のものになるのですが、時にはマイナーなものが持ち込まれます。

先日依頼のあった文献は、出版年が1861年

ウィーンで出版されたジャーナルに掲載されたドイツ語論文でした。

1861年といえば日本史でいえば幕末かな。…というようなことを考えながら、文献を探し始めたのですが、このジャーナル、古すぎてPubMedではにヒットしま
せん。

Single Citation Matcherのdateに西暦を入れてみると、1865年以降でないとヒットしないようです。

Webcat国立国会図書館の検索窓に雑誌タ
イトルを入れてもヒットしないので、国内における所蔵は見込み無しと判断しました。

となると、頼みの綱はオンラインジャーナルと考え、Google Scholarに論文タイトルを入れてみましたが、ヒットせず。

しかし雑誌タイトル+著者+西暦を入れると、論文そのものは出て来ませんが、参考文献として他の論文に紹介されているのがいくつかヒットしました。確実に存在はしているようです。
では雑誌タイトルを、今度はGoogleブックスに入れると…42件ヒット!

このジャーナルはGoogleブックスでカバーされているようです。

そして論文タイトルをGoogleブックスに入れると、ありました!

148年の時を超え、論文がオーストリアから日本へやってきた瞬間でした。


依頼者の医師には、こんな苦労などなかったような顔をして、論文を提供。病院
図書室担当者としての「仕事をした!」一瞬です。
(N.M)

平成21年度図書館振興財団図書館員専門職育成活動助成事業

病院図書室新任担当者研修会

日 時:2009年11月6日(金)-7日(土)

会 場:東京ビッグサイト(605会議室)

募集定員に達しましたので受付を終了させていただきました